清水の舞台からどんぶらこ

俳句や短歌などを月刊ペースで

雑記1

虫一匹飛んで地方都市の昼

 

NISSANの文字の赤さや秋の月

 

いつの世も風に吹かれて芒かな

 

こどもみなとんぼよやがてとんでゆく

 

うららかや一寸先のとんかつ屋

 

晦日糞また糞のさらに糞

 

置き去りのビニール傘や去年今年

 

残り香の重たき煙草冬の宿

 

開いては握って寒き路である

 

冬麗や朱夏我のみの街頭演説

ロボット


もうすでに壊れてしまったロボットのねじを回し続けるお仕事

 

地虫出づはじめの声は一斉に

 

朝になるまえに君から溢れ出す光でもって目覚めたいんだ

 

にんがつの月しづかなりしづかなり

 

come together 明日を元気に生きるため失われるビートルズの魔法

 

エロティカや猫の恋など廃墟など

 

君の所有権を持てたら永遠に持ってしまえば幸せなのにね

 

油彩画の花へとなりてゆく桜

 

あじさいの花が咲いたよゆっくりと雨が降っても輝くために

 

さびしさや野火高々と空へゆく

老女たち

 猫と猫のマネキンと猫の恋

 

アンデルセン童話の中の天国の話ばかりをする老女たち

 

うららかやうすむらさきのドラッカー

 

少年の去ってゆくたび老人は神話を読んでいって眠って

 

誰になろうか大人になればラムネ壜

 

点滅をしてる信号機の裏のはがれかけてるポスターの香

 

ひたひたとシャツ絞りつつ春の雨

 

雨降って去ってどこへと行こうかと旅人たちのかつての声が

 

春雨や始発電車の色は白

 

ねんねんころりころりよねんねんころりよと眠れ遺跡も悲しみさえも

さびしさ

米いつもより艶やかで初竈

 

毎日が祭りなのです朝食にバターロールを選ぶことさえ

 

春めいてアルミホイルのぬるくなる

 

風が吹くと舞い散ってしまうものたちと本のページと留まるインク

 

洗濯物みな飛び出でて春嵐

 

まいまいのテカりが不気味だったので今日はフレンチトーストでした

 

ヴィトンの財布すり切れて寒蒲団

 

八月に降る雪ですか今日もまたさびしさだけを運ぶのですか

 

水温む今日もさびしき雨降れど

 

月になる年頃なんだ女の子はそして星へと変わる男の子

||||

叙情的短歌です ます 叙情的文語がここに書かれています

 

直線状にある||| (かれき) |||| (でんせん)

 

ゆるやかに暗色になるコカ・コーラを予言と言ってアメリカへ行こう

 

紀元前よりのたのたと海鼠かな

 

リゲティの声宇宙から降ってきて人工知能たちがしあわせ

 

サティ白 雪 雪 雪とジムノペディ

 

肩幅に触れる。喉元に触れる。うなじに触れて正二面体

 

冷たさを置いて点字の文字一つ

 

永遠の夜、永遠の昼も来た。だけど僕らの世界は続く

 

レントゲン撮ってしずかに冬の水

数える人

考古学的に残ったルイ・ヴィトンの財布が朽ちてゆくまでの模写

 

仏像の少し暗くなって夜寒

 

童謡が流れてくるよあなたから輪廻転生繰り返すたび

 

生きている人鶏頭を数える人

 

一対の肉塊となり愛という言葉のエゴを押し付けあった

 

冬めくとピカソめいたりしていたり

 

不和であるゆえにあなたと別人で嬉しい だって、触れるんだもん

 

ポインセチアポインセチアどこへでも

 

ツィギー立つポスターポスターポスターポスターポスターばかり鬼ごっこしよ

 

冬雨と歌集 蛍光灯は白

そこに光

鈴虫の節一節に光あれ

 

罪ばかりある世界へとふんわりと天使は降りて雑誌を買った

 

秋の蝶天使に羽を奪われて

 

過去というものを学んで奪われた時を取り戻そうとしている

 

戻ってきたら運動会のような朝

 

朝になるときに盗まれていったね 夜という名の なにか たっとい

 

尊ばれながら蚯蚓は鳴いている

 

鳴く鳥の名前を知らず飛んでゆくそれの名前を鵺と名づけた

 

巣に帰り夜を子どもへ与える鵺

 

取り返しなおして夜に朝を産みなおさせたよ ああ、そこに光